誓~天才演技者達の恋~
そうしたら、何となく辻褄が合う。
初めて会った時、抱きつかれたこと。
「うーん、4年も経ってるからね...今の百合亜ちゃんが分からないから、似てるとは言えないわ」
「...そうですか...」
ユリアはそう呟くと、窓に雨がくっついている事に気がつく。
「帰らなきゃ」と呟くが、身体に力が入らない。
「どうせなら、泊まっていきますか?私は大歓迎だけど。」
麻紀はそう言うと、部屋からパジャマを取り出す。
ユリアは戸惑うが「お言葉に甘えます」というと、香織に電話をかけた。
「ドコにいるの?」
「香織さん..?ごめんなさい。明日の朝には帰ります。今日は日比野邸に泊まらせて頂くことになりました」
「日比野邸!?ユリア、まさか○×区にいるの!?」
ユリアは頷き、香織に返事をする。
香織は戸惑いの声を出していたが、雨が強まるのを見て「迎えに行くのは危険だから、明日の朝、迎えに行くわ」と言う。
「分かりました。」
「じゃ、日比野さんに宜しく言っといてね」
香織はアッサリとokし、電話を切った。
ユリアには多少の違和感を覚えるが、そんなにまで気にしていなかった。
「何かの運命なのかしらね。同じ名前のユリアちゃんが、ここに来るなんて」
「私も、無意識だったんです...。日比野卓也の顔を思い出していたら急に...」
ユリアは口を塞いで、麻紀を見る。
麻紀は驚いた表情を浮かべて、ユリアを見ていた。
「フフッ、卓也モテモテね」
「違います!そういうワケじゃ...」
ユリアは右手を見て、白野邸を見る。
――チクリッ
何かが刺さったように、胸が痛くなる。
「私に笑ってくれたのは...百合亜って子と、名前が同じだから?」
それでもいい。
ユリアは知らない間に、そう思っていた。