誓~天才演技者達の恋~
ユリアは、お土産屋に入って行った卓也を見る。
少し視線をずらせば、由梨が卓也を見ている。
「...別れてないんだ」
ユリアは呟くと、賢斗を引っ張ってお土産屋に入る。
由梨はユリアを睨んでいたが、ユリアは知らないフリをした。
「ユリア?どうしたんだよ」
「向こうで、日本のモノ...食べてくなるかも知れないでしょう?」
ユリアはそう言うと、手を振り払った。
そして両手でお土産を持つ。
「ユリア...」
「賢斗も何か見れば?」
「あぁ、そうするよ」
賢斗が遠くに行った瞬間、ユリアは卓也に近づいていく。
卓也は無表情で、お土産屋から見える飛行機を見つめていた。
「また、無表情になってる」
「...Yuria」
ユリアは卓也の傍に行き、一緒に飛行機を眺めていた。
そして、卓也の右頬に自分の右手をおく。
「この前、平手打ちしたこと...謝ろうと思ったケド...止めたわ」
「...?」
「どうして私が、無表情男に頭下げなきゃいけないのよ」
ユリアは、右頬がピクリと上がったことに気がついた。
そっと手を離し、卓也を見つめる。
「笑った...」
「....」
「ちゃんと笑えるじゃない。私の前では」
ユリアは微笑むと、飛行機が飛び立つ瞬間を目にいれる。
「無理して笑わなくていい。でも、私の前では...笑ってくれる?
あなたの無表情は...心が痛んでしかたないの」
「...頑張ってみるよ」
そう言った卓也はもう、笑顔で。
ユリアは満足気に笑った。