誓~天才演技者達の恋~


卓也はユリアを一度抱きしめると、すぐに離れる。


「携帯がゴミ箱に落ちてて、日本のデザインだったから...もしかして..と思ってな」


卓也はユリアの手に、携帯を置く。

ユリアは携帯を握り締めると、卓也にお辞儀をした。


「本当にありがとう...ございます。」

「なんだよ改まって」

「あなたは...本当に可笑しいわ」


『方向オンチの私が、ここに着いたのは奇跡。

そして、私がここに来るまでのルートはめちゃくちゃだった。

この地図ではすぐに着くハズなのに。
私は遠回りして、ゴミ箱に携帯を捨てている。

あなたはそれですら気づいて...私を探し出した。

まるで方向オンチの私が、どこを歩いて行くか...知っていたみたいに』


ユリアは卓也にお礼を言い終わると、涙を見せた。

ホッとした。

誰かに見つけて貰って、心から安心した。


「ごめん」

「え?何故、あなたが謝るの?」


卓也はブレザーのポケットから、賢斗の携帯と卓也自身の携帯を取り出す。

するとどちらも画面は真っ暗。

ユリアは悟った。


「まさか!充電!?」

「大当たり」


ユリアは最悪...という表情をした後に、大声で笑い出す。

卓也も釣られるように笑った。


「ごめん、地図とかインターネット的なの使ったから...それで電気食ったんだと思う」

「いい、別にいいわ。
私を見つけてくれただけ感謝する。
さぁ、ホテルに戻りましょう?」


すると卓也は黙ったまま、ユリアを見つめる。


「オマエ、ホテルの場所...知ってるのか?」

「知ってるワケないじゃない!知ってたら...あぁ!!」

「俺も知らないぞ?」
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