誓~天才演技者達の恋~
「私に誓って...永遠の愛を」
「ユリア?」
「白野百合亜でもいい。
その人と思っていい...誓って」
『昔の私が泣いている。
自分の想いが届かなくて泣いている。』
卓也はユリアを抱きしめる。
ユリアは、一瞬だけ。
一瞬だけ...前の自分に戻れた気がした。
「卓也...」
「百合...亜...」
『私は日比野卓也が好き。
賢斗よりも好き...。
気づいてしまったの。
だから身代わりでも構わない。
白野百合亜さんの身代わりでもいい。
それであなたが笑ってくれるなら...』
前の自分に支配される中。
ユリアにも意識がきちんと残っていた。
でもそれは、恋に気がついてしまう意識。
ユリアが強く卓也を抱きしめようとした瞬間。
卓也は自分の右手で、頬を殴った。
ユリアは目をパチクリとさせ、卓也を見つめる。
卓也はゆっくりとユリアから離れると、もう一度頬を殴った。
「なんで?」
「駄目だ。誓えねぇー」
「??????」
「確かにオマエは、百合亜の面影を持つし、名前も一緒だ。でも違うんだ」
卓也はしゃがみ込むと、ユリアを見る。
ドキリとしながらも、ユリアは卓也の視線に耐える。
「オマエは...菊花ユリアっていう...一人の人間だ。
たとえ白野百合亜と重なっても、菊花ユリアは菊花ユリアだ。
その瞬間。
ユリアの中での支配は終わる。
ユリアは涙ぐむと、卓也に抱きついた。