誓~天才演技者達の恋~
「何で?ため息なんか...」
「.......」
ユリアは修学旅行の時の写真を賢斗に投げつけると、家を飛び出した。
賢斗は、床にコーヒーカップを投げつける。
大きな音をたてて、コーヒーカップは粉々になった。
「俺だって不安だよ...いつオマエが俺から離れていくのか...」
賢斗は拳を見つめていた。
ユリアはそんな賢斗の言葉を知らず、街の中で涙を流す。
「ネックレスも無くした...携帯も無い...記憶も無い...」
ユリアは地面に座り込む。
そして、通行人の目を気にする事無く叫ぶ。
「どうせ私には、何も...無い!!」
ユリアは、そう言うと立ち上がる。
そしてその足で、携帯ショップに入って行った。
「失くした物は...取り戻せばいいのよね。
戻ってくるかは、分からないけれど」
ユリアは呟きながら、携帯を手にとっていった。
今はスマー○フォンとかが中心で、ユリアには分からないことだらけ。
「前の機種がいいんだけど...覚えていないんだよな...」
卓也がロンドンで粉々にした携帯。
ユリアはそんな事実さえ知らず。
そしてロンドンで一度、自分が捨てていたことでさえ覚えてない。
「情けない。前の携帯でさえ覚えてないなんて...」
ユリアは適当に携帯を取った。
水玉の模様が入った面白い携帯。
スマー○フォンなのだが、メールが打ちやすいようにキーもついている。
「これのピンクってありますか?」
「ありますよ?お目が高いですね。今日発売したばかりなんですよ」
ユリアは微笑むと、見本を握り締めていた。