誓~天才演技者達の恋~
路線変更と路線上
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来月のタレント達のスケジュールを見る女。
その部屋の中にあるソファーに寝転ぶ少女。
「今月はエキストラだけなの?」
「そうよ。でも大丈夫、来年からは女優一本で行くから」
社長椅子に座る母親は、スケジュール表を机に置くと、ワイドショーに目を向けた。
どこもかしこも白野百合亜についてで、母親は顔を歪ませた。
「“ゆり”なんて名前がついている時点で、白野百合亜には勝てないわね。」
「それでも私は本名でやるの!!歌原プロダクションを売り出すために...
歌原由梨
(Utahara Yuri)
で勝負するの!!」
白野百合亜の影響で、芸能人で“ゆり”とか“しろ”とかの名は、まったく売れない。
新人になるとなおさら。
みんな本名などではテレビに出なくなった。
由梨もその一人。
歌手希望の歌原由梨は、名前で白野百合亜に負けてしまっていた。
会社(企業)側が使ってくれないのだ。
その悔しさで、由梨は歌手希望から女優希望へと変わった。
すべては白野百合亜よりも上に行くため。
白野百合亜を本名で活躍させないために....。
「まぁ、ちょうどいい頃ね。彼女はアメリカで、日本で出たとしても映画だけだと思うし...
日本のドラマなどに入るなら今ね」
事務所の社長として、由梨に微笑み。
そして母親として、由梨にエールを送った。