誓~天才演技者達の恋~

室井はいきなりの質問に、黙り込んでしまう。

ユリアは何も言わない室井を見て、分かった。と言う様に頷く。


「ち、違うんだよ。君は菊花香織の子供。
菊花ユリアだ」

「...........」

「城崎賢斗くんと幼馴染で、キミがアメリカで玉突き事故に遭う前から、付き合っていた」


まるで小さい子に言うように。

室井は言葉を詰まらせること無く“嘘の真実”を述べていく。


「じゃあ。
教えてください」

「.............」

「私とソックリな白野百合亜について」


室井はまたもや言葉を詰まらせる。

香織と作り上げた、菊花ユリアの歴史。

意味が無いと分かっていた。

いつかは気づくと分かっていた。

ついにユリアは....
過去の自分を見つけようとしていた。


「答えなさい室井和人!!
白野百合亜と菊花ユリアが何でそっくりなのか!!」


ユリアは分かっていたのかも知れない。
自分が白野百合亜だと。

でも彼女は見てみぬフリをしていた。

演技が天才的で愛されていた白野百合亜。

“嫉妬”だった。

だって今、人々に愛されているのは
白野百合亜に“似ている”菊花ユリア。


「香織さんや室井が私を大切にしてくれるのは、私が白野百合亜に似てるから?ソックリだから?」


もし、ユリアが百合亜なら。

記憶喪失のユリアを誰も、愛してなんかいなかった。

周りが興味を示してくれたのは...。

菊花ユリアが白野百合亜だから。

記憶喪失の前と今を比べて


「笑っていたんでしょう?」


ユリアは小さく呟くと、室井の腕の中で眠りについた。

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