誓~天才演技者達の恋~

涼介は咲子から、Yuriaについて聞いていた。

本当は記憶喪失で、白野百合亜だということを...。


「日比野卓也について?」

「はい。ユリアさんが元に戻った時、卓也くんはおそらく...この世にはいません」


香織は咲子に出されたコップを落とす。

落としたことにさえ気づいていない香織。

咲子は、ゆっくりと床に足をつけると、コップを拾った。


「成見先生から、菊花ユリアさんについて聞いて、大変驚きました。」

「......」


ここは、涼介が自分の家だと思っている部屋。

なのでこの空間には、咲子と涼介と香織しかいない。


「彼女が本当に、白野百合亜なら...この事実を伝えなければいけない。」

「.....」

「幼い時からずっと、卓也くんは黙ってました。

自分が...百合亜ちゃんよりも長く生きられないことを...」


涼介は黙り込む香織を見て、首を振る。


「別に、今の彼女に...そのことを言って欲しいワケじゃない。

ただ、思い出したら...彼女には卓也くんがいない。
それだけを僕は...伝えたかったんです。」

「どれくらい...ですか?」


涼介は、カルテを取って見る。

香織には、カルテの読み方が分からないので、涼介の言葉を待つのみ。


「本来なら、ご家族ではないので言えませんが...今回は特別です。
状況も状況ですし...ね。」

「.....」

「大雑把に言いますが
___________が奇跡だと思われます」

「!!!!!!」


咲子は涼介の言葉を聞き、涙を流しそうになった。

二人とも、幼い時から知っていた。

卓也の病状だって、涼介から耳に挟んでいた。

『なんで、あの二人ばかり...』咲子はそう思っていた。

涼介は泣きじゃくる香織に、ティッシュを差し出した。


「もし、あれでしたら...ユリアさんが思い出したとき、僕から言いますよ」
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