誓~天才演技者達の恋~
律子は左手の指輪を隠した。
「見ましたよ、しっかりと」
「もーう。恥ずかしいな..」
結婚して5年になるのに、律子は指輪を見られることに慣れていない。
なら外せばいいのに。と思うのが普通だが、律子の旦那は海外。
片時も離したくないのだと言う。
ユリアはその気持ちがよく分からない。
修学旅行から、ネックレスは帰ってきていない。
第一、ユリアはそのことすら覚えていない。
「今年のクリスマス。帰ってくるって言ってたの」
「旦那さんが?」
「そう。5年目のクリスマスは、意地でも帰って来るって」
律子は嬉しそうにそう言うと、指をマジマジと見ていた。
ユリアは幸せそうな律子を見て「いいな」と呟く。
「Yuriaさん。そろそろ準備お願いします」
舞台裏の楽屋に、演技祭実行委員が入る。
ユリアは頷いて、ドレスの裾を持った。
「Yuriaのウエディングドレスを見るのは、誰なんでしょうね?」
「えっ?」
「やっぱり、賢斗くんなのかしら?」
ユリアは違和感を感じた。
隣にいる人は...ユリアが考えた結婚式には...
「行って来ます」
「舞台袖で見てますね。」
律子の言葉に頷くユリア。
楽屋から出ると、スーツを着た卓也が立っていた。
「宜しくね。Yuriaさん」
「はい。」
ユリアはゆっくりと卓也の手を握る。
卓也はすぐに感じ取った...ユリアが痩せたと...。
「無理するなよ。ゆりあ」