誓~天才演技者達の恋~
ユリアに迫る悪魔の声
{卓也,「俺は...オマエじゃなきゃ駄目なんだ」}
{Yuria,「リクト!!どうして...どうしてかき乱すようなこと言うの?
私...私、諦めようとしてたのに。ハヤを愛そうとしたのに...結婚しようとしたのに....」}
師羅は相変わらずのYuriaの演技に、笑みをこぼしていた。
Yuriaの演技は相変わらずだが、進化もきちんとしている。
“さすがは百合亜”と師羅は心の中でつぶやいた。
でも一番、師羅の関心を得たのは卓也の演技だ。
Yuriaのことで悩んでいる事は、師羅にはお見通しだ。
だけど、演技でそんな余計なものは、まったく見れない。
「成長したな...卓也」
サングラスをかけなおしながら、師羅は言った。
卓也の演技に余計なモノは無いし、その役になりきっている。
リクトという一人の人間になっている。
リクトの中に日比野卓也はいない。
「Yuriaは天才だな。
日比野卓也の才能までを開花させるとは...」
師羅は楽しそうに舞台上を見る。
そして、目の前にいる土居朱美に言った。
「ずいぶん楽しそうだね...土居さん」
「......」
土居朱美と師羅がいるのは、関係者又は取材班の席の端。
なので小さい声ならば、話をしても問題は無い。
「師羅監督は、知っているのでしょう?」
「何の話かな?」
ニコニコしている師羅に朱美は言う。
「Yuriaが白野百合亜だってこと」
師羅は朱美の言葉に首を振る。
朱美は振り返って、師羅を睨みつける。
「怖いよ、朱美ちゃん。
俺は、彼女が演技をするなら、何でもいい。
天才という才能を、世間に見せてくれるだけでいい。」