誓~天才演技者達の恋~
朱美と師羅はその後、何も言わずに舞台を見る。
キラキラと輝くユリアと、その輝きに近づこうとしている卓也。
舞台上は恋人で..由梨と賢斗は舞台裏で、唇を噛むばかりだ。
{Yuria,「さよなら?」}
{卓也,「あぁ、そうだ...今の俺には...オマエはキツイ」}
{Yuria,「そ、そんな...」}
Yuriaは卓也にすがりつくように抱きつく。
卓也はつくづくYuriaの演技の才能を、うらやましく思った。
口紅の色一つで、彼女は形をすべて変える。
由梨にも明日香にも負けない美貌や、スタイル。
そして下手をすれば、美貌の逆になることもある。
化粧一つでYuriaはYuriaで無くなる。
『私が私で無くなったとき...』
卓也は、Yuriaの顔をマジマジと見る。
ずっと“まさか”と思っていた。
百合亜が生きてるなんて、夢物語で...ありえないと思っていた。
{卓也,「オマエは、今、自分を偽って生きてるか?」}
セリフには無い一言。
ユリアは口を開けて、卓也を見る。
『私が“ゆりあ”じゃ無くなった時』
一瞬だけ、記憶の一ページがよみがえる。
空港での一ページ。
ある“森”の中での一ページ。
「!!!!!!!!!」
ユリアは、卓也の手を握ると、小さく呟いた。
「私は...ここ...私はここ!!」
卓也はいきなりユリアの頭を抱える。
そしてそのままキスをした..。
審査委員や、演戯祭実行委員、記者達は口を開けて、舞台上を見る。
ユリアと卓也の突然のアドリブに、明日香は目を見開いた。
「百合亜...卓也...?」