誓~天才演技者達の恋~
香織の独り言は、あのあと20分以上続いた。
賢斗は聞いているフリをしながら、さっきと同じようにテレビの中の白野百合亜を見る。
ワイドショーに引っ張りタコのネタだ。
白野百合亜は賢斗の、小さな片思いの相手でもある。
「明日、百合亜ちゃんを見に行くんでしょう?
果歩を拾うつもりなんだけど...一緒に行く?」
「いえ、お友達とごゆっくり」
「そう」
香織はパソコンでカチカチと音をたてる。
賢斗は明日を楽しみにしていた。
天才、白野百合亜に会うことを....。
「ねぇ、あんたはそのまんま俳優の道でいいのよね?」
「はい、白野百合亜と同じ舞台に立ちたいんで」
香織はパソコンを止めて賢斗を見ると、鼻で笑った。
賢斗が怪訝そうな顔をすると、香織は謝る。
「ごめんなさい。
でも俳優になりたいならば……
もうちょっと演技頑張らないとね」
「あッ...」
「これでも明華のトップ生徒よ。
演技をするのも、演技を見抜くのも得意!
……でも白野百合亜だけは分かんないのよね」
香織はワイドショーを消して、DVDを見出した。
それは白野百合亜が高視聴率を叩き出したドラマの...。
「これこれッ告白するシーン。
これって、他の誰かのことを考えてるとしか思えないのよね...
でもなんだが、演技されてる感もあるしな...」
香織はリモコンを片手に画面に食いついていた。
賢斗は、“他の誰か”が気になって仕方無かったのだが....。