誓~天才演技者達の恋~
「百合亜!!」
そう叫んで、ユリアを抱えたのは卓也。
朱美は木の陰からコッソリと、写真を撮っていた。
「ついに、白野百合亜ということを知ったか」
朱美は泣きじゃくる由梨と、ショックを隠せていない賢斗
勝ち誇った明日香と、驚きながらも嬉しそうな卓也を撮る。
朱美は卓也の腕の中で眠るユリアを、レンズ越しで見る。
「ずいぶん幸せそうね」
朱美はそう言うと、携帯を取り出した。
賢斗は、土居朱美の存在に気づいていた。
だけど、賢斗が何か言ったところで..この状況はきっと収まらない。
「おれ、室井さん呼んでくる」
「待ちなさい。城崎賢斗」
明日香は賢斗を呼び止めた。
賢斗の横を、ユリアを抱えた卓也が通り過ぎた。
「!!!!!!!」
「卓也。」
賢斗が驚く中、明日香は卓也を呼ぶ。
「なんだ?」
「話は麻紀さんから...雪奈さんから聞いてるわ。」
「...あぁ。あっちの話な」
明日香は眠っているユリアのおでこに、一回だけでこピンをする。
卓也はそれでも起きないユリアを見て、胸が苦しくなる。
「いい加減に目覚めなさい。
白野百合亜を待っている人間が、溢れているわ。
菊花ユリアでいるのが悪いんじゃない。
ただ....
後悔してほしく無いの....」
明日香はそう言うと、走って去って行ってしまう。
卓也は複雑な心境で、明日香の背中を見つめた。
『明日香ちゃんは、卓也くんのこと..スキだったんだよ?
その気持ちは受け取ってあげてね?
明日香ちゃんは、卓也くんと百合亜ちゃんが元に戻るのを、心から願っているのよ?』