誓~天才演技者達の恋~
小椋は、話の先が見えなかった。
何故今、亡き白野百合亜の話が出てくるのか、皆目検討もつかない。
「あれっ?小椋さんや、スタッフさんは、ちんぷんかんぷんみたいだね」
巻貝は笑いながら、コメンテーター席から立つ。
隣にいるコメンテータ達が、いい顔をしていないと分かりつつの行動。
「演技の天才、白野百合亜。
それで数年後に、同じく天才の演技者Yuria。
可笑しいと思うのが普通でしょう?」
「!?!?!?!?」
「俺はね。こう考えるワケですよ。
Yuriaは白野百合亜なんじゃないかって。
そんで記憶喪失的な、まるでドラマみたいな状況なんじゃないかって」
巻貝の言葉に、小椋は息を呑んだ。
朝キラッ☆の視聴率は、知らない間に上がっていく。
「きっと日比野君は、昨日まで菊花ユリアは、菊花ユリアとして見ていたハズ。
だけど昨日、分かったんだ。
Yuriaは...菊花ユリアは白野百合亜だって」
「....」
「そうすれば、すべての辻褄が合う。
今まで過去を一切喋らないYuria。
そして、付き合っているハズなのに、何故か幸せそうじゃない歌原由梨と日比野卓也。
すべてが合うんだよなぁ...」
カメラ目線で言う巻貝。
小椋はモニター同士で、巻貝と目が合う。
その視線に、背筋が伸びる。
「小椋さん。分かった?
きっとYuriaは過労なんかじゃない。
記憶喪失が本当なら、きっと彼女は白野百合亜に戻ろうとしてるんだよ」
香織は、テレビを思いっきり床に叩きつける。
室井は横目でそれを見ていた。
「どうして?なんで、一番の情報通に...」
「どうしますか?何かファックスでも送っておきますか?」
「なんて書くのよ。
Yuriaは巻貝誠司が言った通り、記憶を失った白野百合亜です。
そっとしておいてください。
とでも書くって言うの?
第一、ユリアは眠っているのよ?
まぁ、きっと今日の夕方から騒がれるわ。
とりあえず...賢斗に連絡を入れなさい。
何も喋るな!と...」