誓~天才演技者達の恋~

多くの報道陣。

由梨は自分の右手から、指輪を取った。

卓也との初共演の時の小道具。

この指輪は、劇中に出てきた指輪だった。

永遠の約束を誓った二人。

その時、卓也は由梨に指輪を渡した...。

もちろん役になりきって。


「左手にあったら、報道陣...驚くんだろうな...」


由梨は左手の薬指に指輪をはめた。

あの時由梨は、スタッフに頼んでこの指輪をもらった。

それからずっと、大切に宝石箱に閉まってた。

でも昨日、テレビからされた『破局宣言』を見て、悔しかった。

意地悪したくなった。

Yuriaに返したくなかった。


「卓也くん、歌原由梨ちゃんとは決着ついた....?」


記者の質問に卓也は答えようとした。

しかしその瞬間、記者達の動きは止まる。

由梨が、由梨が卓也の腕にしがみついた。


「えっ...?」


卓也が驚く中、由梨はさりげなく左手をアピールした。

女が左手の薬指に指輪。

記者達が何も言わないハズが無い。


「由梨ちゃん?その指輪は?」


卓也は目を見開いて、由梨を見る。

バニラの匂いが鼻をくすぐる。


「ここにしてるんですよ?もちろん貰ったに、決まってるじゃないですか!!」


由梨の茶髪の髪が、卓也の肩をくすぐる。

由梨は幸せそうに、卓也の腕にしがみついていた。


「昨日の発言は、私にビックリさせるための...サプライズだったんです!!」


マイクとフラッシュが、由梨と卓也に迫る。

何か言いたいのに、言い返せない。

卓也は、口から声を出すことが出来ない。

出来なかった....。
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