誓~天才演技者達の恋~
Yuriaだろう?
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「日比野卓也が倒れた?」
ユリアは目を覚ました瞬間、香織に言われた。
『卓也くんが、記者にコメント中、意識不明の重体になった』って。
あの時倒れたユリア。
でも前みたいに、その時の記憶が抜けてるわけじゃない。
ちゃんと覚えてる。
『自分が白野百合亜』って言われたこと。話してた事。
でも、ユリアはその事実を受け止めることが出来ない。
「自分の記憶の一部。私は聞いたのに思い出せない」
そう呟くユリアに、悲しい視線しかおくれない香織。
「日比野卓也は、白野百合亜にとって、本当に大切な人だった?」
「えぇ。そうよ」
「本当に?」
香織はユリアの視線に耐えられない。
無表情の顔が、その視線を痛く突き刺す。
香織を射止める。
「しばらく一人にしてください。自分が菊花ユリアじゃない。だなんて...思いたくない」
病室のベットに書かれた名前。
そこには菊花ユリアと書かれている。
ユリアはたくさんの会社から贈られた花を、足で潰す。
「何が...白野百合亜よ...私は知らない。あんな天使みたいな笑顔を持った子...なんて知らないッ!」
カメラのフラッシュが、ユリアのいる階まで届く。
カーテンを閉め切っているのに、まるで撮られている気分だ。
「やめてよ...知らないんだってばッ!!知らない。あんな子知らない」
嫌がらせのように届いている、白野百合亜の写真。
必ずその傍には、日比野卓也が映っている。
「知らない、知らない、知らない、知らない」
ユリアは布団をかぶる。
そして、ずっと「知らない」と言っていた。