誓~天才演技者達の恋~
香織は、解かれた髪のまま
取られた眼鏡の存在を忘れ、明華の校舎を走る。
「うわッ、誰だよあの美人」
「あのスカート丈って、伯守香織?」
香織が通り過ぎると、誰もが振り返る。
教師でさえ、足を止めていた。
「冗談じゃない!!」
香織は鏡に映る自分を見て、悲鳴を上げた。
自分らしくも無い格好。
でも香織は、みつあみの時よりも、眼鏡の時よりも...自分に自信が持てる気がした。
「大舞台...」
立ちたいなんて思ったことは、一度も無かった。
周りに合わせて、それなりに演技をしていればいい。そう思っていた。
香織はこの時初めて、自分が今何をしなくちゃイケナイのかが、分かった気がした。
「私は、明華の芸能科...トップ生徒」
しかも“初代”だ。
こんなダメダメがトップ生徒なんて、絶対にイケナイと思った香織。
彼女はハサミを取り出し、スカートを切り出した。
器用な香織は、すぐに完成させて履いてみる。
「ぁ!!」
やっと周りの子と同じようになった。
スカートの丈も、髪型も、顔も?
香織は笑顔を作る。
「ウシッ」
香織は制服を整え、明日に備える。
この時はもう、剛史に恋をしていた。
「鎌足剛史...」
人を集める人気者。
剛史に憧れと、恋心を抱き始めていた。
次の日に会えることを楽しみに。
『可愛い』と一言もらう為に。