誓~天才演技者達の恋~

朱美は一言「酷い」と呟いた。


「彼女は知らないうちに、父親を求めていたんだ」

「....?」

「実際に、彼女は父親を見たことがない。

母親が捨てようとしていた物の中から見つけたんだ。
学生時代の父親の写真を。

俺はそれを知ったから別れた。
あいつは、密かに秘めている父親から、離れなきゃいけないから。」


学生時代?

朱美はキョトン顔で、鎌足と雪奈の顔を見る。


「私もビックリしたんだよ。学生時代の剛史にそっくりそっくり」

「...はぁ!?」

「なんだよ、土居ィィィィィィ。まさか俺が学生時代、老け顔だとでも思ってたのか?」

「その通りです」


朱美はそう言うと、携帯を取り出した。

鎌足は腹を抱えながら笑う。


「剛史、ここは笑うトコじゃなくて。怒るトコだよ?」

「雪奈。オマエも笑っていいぞ?」

「本当?じゃあ、遠慮なく」


雪奈は今にもひっくり返るんじゃないか。ってくらいに笑う。

朱美は横目で見ながら、話を進め、携帯を切った。


「土居ィィィィィィィィ?どうした?」

「土居ですって。鎌足編集長」


朱美はコートを身にまとうと、珈琲をいっきに飲み干す。


「土居?」

「私自身のスクープである話。他社に売ろうと思います。」


雪奈は心配そうに鎌足を見る。

鎌足は頷くと、雪奈に首を振った。


「思いっきりぶつけてこい。オマエが書く場所は空けといてやる」


朱美は頷くと、流星喫茶を後にした。


「カッコつけちゃって。」

「うるせぇー」

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