誓~天才演技者達の恋~
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「ここまでくると、無様だな」


卓也は苦笑いを浮かべると、林檎をカゴから取る。


「剥いてやろうか?」


貴島龍牙の提案に、卓也は頷く。

卓也の右手には、二種類の点滴。

胸には心臓の動きを見るための機械。

龍牙が言うように、今まで輝いていた卓也とは天と地の差。

無様と言っても、悪くないのかも知れない。


「いつまで、生きれるんだよ」

「直球だな。ずいぶんと」

「小学校の時は、20までだったか?余命宣告は」


卓也は頷くと、窓の外を見た。


「仕事、頑張りすぎたかも知れない」

「えっ?」

「高校卒業が奇跡。」


卓也はそう言うと、布団を被った。

龍牙は、驚きを隠せない表情で卓也を見る。


「冗談だろう?」

「馬鹿、冗談なワケあるかよ。
本当は、今回のあれで死ぬハズだったんだよ。

今、オマエと話せてるのは奇跡に近い」

「..........」

「最低でも明日。
最大でも高校卒業。
それがおれのタイムリミット」


卓也はそう言うと、台本を手に取った。


「それは?」

「最後の台本だ。白野百合亜の一生をやるんだ。俺は若い時の百合亜の父親役」


卓也は笑うと、台本を投げ捨てた。


「本当はやりたくない。
やったら、Yuriaを全否定している気がして...

百合亜は生きてるのに、なんで、何で...」


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