誓~天才演技者達の恋~

卓也の言葉は、龍牙には理解出来なかった。


「でもそれって、Yuriaを守る手段なんじゃないのか?」

「........」

「Yuriaが、Yuriaでいるための...最終手段なんじゃないのか?」


師羅も龍牙と同じことを言っていた。

『卓也。
これは最後の賭けだ。

白野百合亜が、記憶を戻した時に、演技が続けられるように。

たとえ、白野百合亜が菊花ユリアで生涯を終えようとしても。

気軽に生きて行けるように。
天才という花を地面に落とさないように。

白野百合亜、Yuriaをキミが守るんだ。
....一回、彼女は死んだことにしないか?』


言ってることはめちゃくちゃだけど、きちんと卓也には伝わった。

白野百合亜が死んだことにすれば、Yuriaがたとえ記憶を戻したとしても、菊花ユリアとして生きていくことが出来る。

世間はしばらくすれば忘れる、都合のいい人達だから。

きっと白野百合亜=菊花ユリアということは忘れるだろう。

しかし、今Yuriaは白野百合亜と公表したら、ずっと後ろ指を差され続ける。

記憶を戻したらいいのかも知れないが、今のままではきっと、ユリアが百合亜に戻る事は確立的には少ない。


「菊花ユリアは孤独だな」

「.....」

「記憶が無くて、世間にはワケも分からずあーだこーだ言われて。

今は孤独だろうぜ。自分は菊花ユリアじゃなくて、白野百合亜って言われるんだから」


龍牙はそう言うと、席を立った。


「帰るのか?」

「早坂先生に言われてんだよ。卓也に無理させるなって」

「悪い。気を使わせて。」

「いいんだ。
....俺、好きだよ。卓也の演技。」


龍牙は気まずそうに言うと、病室を出て行った。


「.......俺の演技が好きか」


昔、百合亜は王子役の卓也を見て、上手いと言った。

でもアドバイスが次々と飛んできて、卓也が嫌になった記憶がある。

『上手いよ。上手いけど。私は好きじゃない』
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