誓~天才演技者達の恋~
「あんたは馬鹿か?
菊花ユリアと日比野卓也は世間の餌...餌食になるぞ」
「私を...知ってるの?」
龍牙は頷くと、ユリアの手を引いた。
ユリアは何も聞かず、言わず。ただ後をついて行く。
「俺は貴島龍牙。キミのファン」
「...きじま...りゅうが...」
ユリアは目をパチパチさせて、龍牙を見る。
「オマエが自分を知りたいなら、俺が教えてやる」
「.....?」
「ちゃんと話してやる。菊花ユリア...」
ユリアはエレベーターの中で、龍牙に抱きつく。
「えっ?」
「凄く不安で不安で堪らなかった。あなただったら、私をちゃんと教えてくれる」
そうでしょう?と言うと、ユリアは笑みをこぼした。
本当に、ユリアは毎日孤独だった。
日に日に怯えている看護士や医者。
次第に会いに来なくなる関係者。
ユリアはただ、自分を知りたかっただけなのに。
ただ、自分のキャラや個性を見つけ出したかっただけなのに。
「みんな嫌いなの、私の事。
でも外にいる人達は、私のことが好き」
「.....」
「ちゃんと分かってるんだよ。それは違う意味の好きだって」
「.....」
「でもね、誰でもいいの。私を好いてくれるなら、たとえどんな形でも、いいの」
ユリアと龍牙を乗せたエレベーターは、屋上へと向う。
「さっき、菊花ユリアと日比野卓也は餌食って言った?」
「あぁ」
「日比野卓也...って...誰?」
ユリアは自分で言ったハズなのに、気まずそうに笑う。
「そっか、その人も...
私が傷つけてしまったんだ...」