誓~天才演技者達の恋~
龍牙は、ユリアの表情を見て心を痛める。
「泣くなよ」
「.......」
両手でユリアは顔を隠すと、声を殺して泣き出した。
「本当は、本当は、私...菊花ユリアじゃないんでしょう?」
「えっ?」
突然言われた質問に、龍牙は戸惑う。
てっきり、ユリアは何も知らないと思っていたのだ。
「時々、ワケの分からない患者さんが入ってきて、この裏切り者って言うの」
「裏切り者?」
「私は、白野百合亜のファンだったんだ。って。」
「!!!!!!!!」
「それでこっそり調べたの。白野百合亜さんについて」
「そ、そしたら?」
「私の名前..菊花ユリアと、その白野百合亜がイコール(=)で結ばれていた。同一人物だって」
ユリアはエレベーターから降りると、背筋を伸ばした。
「そして、白野百合亜について調べたら、日比野卓也が出てきた」
「........」
「小六の時、私は死んだはずだった。でも生きていた。」
「.......」
「記憶喪失を代償に...菊花ユリアとして...生き残ってしまった....」
ユリアは屋上のフェンスに体重を預ける。
そして龍牙を見つめた。
「何回も、ここで飛行機を見た。何回も何かが過ぎった。でも思い出せない。
....自分が白野百合亜だった記憶は、戻ってこない」
「飛行機事故まで知ってるのか」
「えぇ、ちゃんと調べたもの」
龍牙はユリアの横に立つと、ちょうど真上を通る飛行機を見つめた。
「飛行機...か...俺は...生き残ったのがあんたで良かったと思うけど」
「.....?」
「俺の両親も、白野百合亜と同じ飛行機に乗ってたんだよ。
......ダメダメな両親の最後は、空の上、または無人島だったってワケか」