誓~天才演技者達の恋~
事故で失くしたモノ
ユリアは突然の龍牙の告白に「えっ?」と声を漏らす。
龍牙は何も無かったように笑顔を見せる。
「俺の両親は本当にダメダメで、その時も俺一人残して、旅行をしようとしてたんだ」
「....」
「家の机の上、そこに手紙が置いてあった。白野百合亜を追っかけてきますって」
龍牙の両親は、白野百合亜の大ファンだった。
ハリウッドデビューする姿を、誰よりも見たがっていた龍牙の両親は、貯金を使い果たして、百合亜と同じ飛行機に乗った。
「手紙を見たときは死ねって思った。まさか数時間後、死んだなんて知らせを受けるとは思わなかったけど」
「.......」
「あんたは生き残っちゃったんじゃない。生き残らせて貰ったんだ」
きっと龍牙の性格が捻くれていたら、たった一人の生き残りであるユリアを、拳一つで殴っていた事だろう。
でも彼女には何の罪も無い。
「あんたは両親と記憶を失ったんだ。」
「......」
「記憶は戻るとしても、両親は戻ってこない」
「......」
「代償はたくさん取られたかも知れないけど。あんたはちゃんと、神様に選ばれたんだよ。生きていいって。」
ユリアは首を振る。
「何かを失ってまで、私を生かす必要なんてない。
私が生きている価値なんて無い!!」
「.....」
「両親さえ覚えてない。記憶は空っぽ。
神様は、私に何を残したの?」
「演技の才能だよ。」
ユリアは龍牙の言葉に、口を開けたまま静止する。
「...演技?」
「そう。誰でも持つ事の出来ない才能。」
「......」
「知ってると思うけど、二人?の共通点は演技者だという事。
白野百合亜も菊花ユリアのYuriaも演技の才能は、誰よりもズバ抜けていた」
ユリアは龍牙の言葉に、顔をゆがめた。
「そのせいで、私は家族と記憶を失ったの?」