誓~天才演技者達の恋~
強がってみたものの、何が大丈夫なのか分からない。
「ハンカチ、使うか?」
「だ、大丈夫だって言ってるじゃない!!」
すると男の子はヘッドホンを鞄にしまい、ハンカチを差し出す。
明日香は仕方なく受け取った。
すると、男の子は笑ってヘッドホンを鞄から出す。
「音楽...スキなの?」
「あぁ、父さんが作曲家でさ。憧れている」
明日香には理解出来なかった。
どうして父親に憧れを抱くのか...。
でも明日香は自分の中で、性別が違うからだ。と勝手に解釈した。
「結構有名なんだぜ
柊秋
(Hiiragi Shuu)って」
「ヒイラギシュウ?あぁ聞いた事ある気がする。
手がけるアーティストは全員売れるって、噂の人...でしょう??」
「そう。嬉しいな、自分の父親が知られてるなんてさ。
あぁ、俺の名は………
柊怜也
(Hiiragi Reiya)ね。あんたは??」
明日香は泣くのをやめ、自信気のある顔に戻る。
怜也は突然の変化にドキッとした。
「私は、霧島ジュエリーの会長の孫。
霧島明日香よ。ハンカチありがとう」
「へぇー面白いね。本当は、勝気なお嬢様なんだ」
ムッとした顔を見せながらも、明日香は頷く。
「勝気...じゃなくて、負けず嫌い。それだけよ」
明日香はそう言いながら、周りを見渡す。
ちょうど卓也らしき人影が見えた。
「....ごめん。行くわッ!」
明日香は怜也の横を勢い良く、通り過ぎた。
怜也は卓也を遠めで見て、確信したのだった。
霧島明日香は、あいつが好きなんだと。