誓~天才演技者達の恋~

「百合亜!!」

「卓也、ごめんなさい」


車の音に、邪魔されながら百合亜は叫ぶ。

泣きじゃくりながら、想いを必死に伝えようとしていた。


「こんな形で再会するなんて、思ってもみなかった」

「......」

「あたしは、卓也が大好き。

白野百合亜でも、菊花ユリアでも大好きよッ」


卓也は目を見開いて、百合亜を見る。

てっきりユリアは、賢斗が好きだと思っていた。


「最初は、記憶喪失の初めは、孤独だった。」

「........」

「賢斗が菊花ユリアに光をくれたの」


でも、Yuriaとして活動しだした時、ユリアの中で変な感情が出てきた。


「私は、いつの間にか、卓也を探してたの。
記憶の中にいないハズの、卓也をずっとずっと目で追っていた」

「........」

「怖かった。
私は記憶を失う前から、賢斗と付き合ってるって言われたから、記憶を失った私が、変わってるんじゃ無いかって。

記憶を失ったからこそ、もう前みたいに戻れないんじゃ無いかって」


百合亜はそう言うと、その場にしゃがみ込んだ。

その瞬間、信号は青になる。

卓也は地に蹴りを入れながら、百合亜のもとへと走った。


「そして私は、分身みたいな“白野百合亜”の存在を知る」

「百合亜...」

「卓也がYuriaに笑ってくれるのは、その子に似てるからなんだ。とか思うようになって...それが菊花ユリアとしては初めての嫉妬だった。

賢斗が女の子と共演しても、他の女の子と騒がれても、嫉妬なんて感じなかったのに、付き合ってもいない卓也に...」


卓也は百合亜の腕を掴むと、街の中を進んでいく。


「えっ?卓也ッ!!」

「..........」

「た、たく...」


百合亜は卓也に引っ張られるまま、ある建物の中へと入って行った。
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