誓~天才演技者達の恋~
「卓也ッ!」
明日香は卓也の腕を掴んで、卓也を振り向かせる。
卓也は驚きながら振り向かえるが、明日香の顔を見ると、安堵のため息をついた。
「明日香…明日香かぁ…」
「しッ、失礼ね!…ところで、ネックレス持ってきたんでしょうね!?」
卓也はズボンのポケットから、ネックレスの入っているボックスを出す。
明日香は霧島ジュエリーと刻まれたボックスを見て微笑む。
「母様はさすがね。数時間でネックレスを完成させるなんて…」
「名前彫ったのは、お前の母さんの、部下じゃないか……」
「だからよ!母様の部下は使い物になるって事」
明日香はそう言うと、一台の車を見つめた。
卓也は横目で不思議そうに、明日香を見つめる。
「どうしたんだ……?明日香?」
「父の車…ナンバー、車体が…そうだわ」
明日香は呟くと、睨むように車を見つめていた。
「私の父は、私を…母を愛してない。
たぶん憎んでるのよ…
自分の思い通りにならなかったから…。
悔しいんでしょうね。まぁ、今となっては関係無いけど…」
明日香は車から出てきた男を見ると、視線を合わせていた。
卓也は、二人を見る。
「離婚するんだと思う。もちろん、霧島と縁を切るのは父なんだけどね」
明日香は父に笑顔を見せると、視線を外した。
明日香は卓也から離れていく。
「きちんと伝えなさいよ……伝えたくても、伝えられない人…いるんだから」
明日香は笑うと、下の階に降りて行った。
その横顔はまるで泣いているようで……。
「明日香……。」
卓也はボソリと名を呼んだ。