誓~天才演技者達の恋~

卓也は、しばらくキスを続けると、百合亜を抱き上げた。


「キャ」

「動くな」


百合亜はその動作にドキッとする。

お姫様抱っこで見る卓也は、ユリアの時よりも違う。

数年ぶりの卓也。

心が百合亜で見る卓也の横顔は、胸が苦しくなるほど悲しげだった。


「ん?」

「何か、懐かしいな...って。記憶が無い間は、卓也は日比野卓也っていう一人の俳優としか、思ってなかったから。

ううん、そう思おうとしてたから」


百合亜はそう言うと、ベットの上に降ろされた。


「ごめん」

「何が?」

「初めては、ちゃんとしたトコが良かったよな?」


卓也は自分の上着に手をかけながら、百合亜に聞く。


「ちゃんとしたとこ?

ここもちゃんとしたトコでしょう?」

「ほらここは、愛が無くても抱けるとこだから」


卓也は百合亜の首筋に顔を埋める。

百合亜は時々ピクリと動きながら、首を振った。


「でも...これが卓也の部屋とか、私の部屋だったら、もっと...辛かった...」

「百合...亜」

「最初で最後なんて、思いたくない...」


百合亜は泣きながら、卓也を受け入れる。


「ンッ...」

「ごめんな、本当にごめんな...」


卓也は百合亜の涙を拭うが、それ以上に百合亜から涙は溢れてくる。


「大好き...ううん...愛してる...」

「うん」

「私、卓也が大好き...」
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