誓~天才演技者達の恋~
卓也は、百合亜の腕を掴む。
苦しさや痛さが、百合亜の右腕にも伝わる。
「待って、今救急...」
卓也は百合亜の右腕を掴みながら、首を振る。
「卓也?」
「もうこれ以上の延命はいらねぇーよ」
「!!!!!!」
「百合亜の傍で死ねる。だか...」
百合亜の腕から、卓也の手の感触が消えていく。
「卓也ッ!!」
卓也の息を確認すると、まだかすかにあった。
百合亜は急いで携帯電話をポケットから出す。
きっと、このことも話題になって、酷いバッシングを受けるのだろう。
「でも、人の命には代えられない」
百合亜は決心すると、119番に電話をかけた。
この時はまだ冷静で、落ち着いて話せた。
しかし電話が終わった瞬間、百合亜は床に携帯を落とす。
「あっ...携帯..」
百合亜が落ちた携帯に手を伸ばすと、ベットの下に携帯が落ちていた。
自分とは同じ機種で、色違い。
「...忘れ物?」
百合亜は悪いと思いながらも、携帯を開いた。
「....卓也と私....?」
待ち受け画面には、あの日の写真が。
空港のゲート近くで、笑顔でピースしながら写ってる。
「この携帯は...卓也の?」
メールアドレスを確認すると、確かに卓也のモノだ。
百合亜はポツリと涙一つ、携帯に落とす。
「さよなら、しなきゃ、いけないのに、こんなの出来ないよ」