誓~天才演技者達の恋~

百合亜は自分の携帯を握り締めると、卓也の携帯を傍に置いた。

自分のメールアドレスと、自分が写っている写真をすべて消して。


「さよなら」


さよなら。なんてしたくない。

ケド、百合亜が傍にいて、卓也の寿命が延びるワケじゃない。

それに、あの行為は最初で最後。

もう会うことは無いだろう。

百合亜自身、また卓也の前で笑える自身が無かった。


「.......」


百合亜は勢い良く出ると、外からの救急車の音を聞いた。

この様子じゃ、今は助かりそうだ。

百合亜は顔を隠すようにして、玄関まで走る。


――ドンッ

百合亜は誰かとぶつかって、尻餅をつく。

目を開けると、百合亜を心配そうに覗き込む救急隊員。


「す、すみません」

「いえ、こちらこそ。すみません、急いでるので」


救急隊員は、百合亜を怪しむこと無く上に上がっていく。

百合亜は起き上がると、適当に街を走り出した。

百合亜とぶつかった救急隊員は、ホテルから出て行く百合亜を目で追っていた。


「おい、木庭(コバ)!!何やってんだ」

「あっ、ハイ、すみません」


木庭幸仁(ユキヒト)は、気になりながらも先輩の背中を追う。


「まったく、ここでの急患は、なんだか胸糞悪いな」

「走りながら愚痴言わないでくださいよ。俺もなれませんよ。この手の呼び出し」


先輩の愚痴に走りながら付き合う幸仁。

そして部屋につくと、幸仁は管理者から預かった鍵で開けようとする。


「...ん?」

「木庭、どうした?ガスの臭いでもするのか?」

「いや...開いてるんですよ...」


幸仁は開けながらそう言うと、中に入った。

入ると、ベットの上で息苦しそうに。

でも意識を失った卓也がいた。
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