誓~天才演技者達の恋~

「こいつって」

「日比野卓也だな、俳優の」


卓也に呼びかけをしている先輩と、動揺を隠せない幸仁。

そして目を見開くと、他の先輩にバトンキャッチをして、ホテルの一室から飛び出す。


「おいッ、木庭!!」

「すんません、彼女、彼女を捕まえないと」


幸仁は急いで階段を駆け下りると、ホテルから飛び出す。

しかし辺りを見回しても、さっきの彼女はいない。


「やっぱり、今の子...Yuriaだ」


たぶん、この近辺にまだ百合亜はいる。

でも任務を放棄して、百合亜を探す事は出来ない。


「クソッ!!」


幸仁は地面を蹴ると、ホテルに戻り、上まで全力疾走。


「おい、オマエは何してんだ」

「すみません、ケド」

「ケドじゃない。警察に電話しろ。一緒にいた女を捕まえなきゃならん」


先輩の言葉に、幸仁は拳をつくる。


「先輩」

「なんだ、早くしろ」

「見たんです俺.....」

「はぁ?幽霊か?今はそんな冗談「Yuriaです。白野百合亜を見たんです」


卓也はもう他の救急隊員に運び込まれている。

この部屋にいるのは、先輩と幸仁。


「本当か!?」

「はい。ぶつかりました相手が、彼女でした。間違いありません」

「でも彼女は病院に...!!」


幸仁の傍を、勢い良く先輩が通り過ぎる。

幸仁はホテルの窓を開けて、街を出来る限り見渡したが、百合亜らしき人影はいない。


「Yuria...泣いてたな...」


幸仁はそう呟くと、部屋を飛び出した。

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