誓~天才演技者達の恋~

タイムミリット

________
____________


「百合亜!?百合亜」


貴島龍牙は、歩道橋の上から百合亜を見つけた。

急いで駆け下りて百合亜の元へ走る。


「百合亜、待て、白野百合亜」


その声に反応するのは、周りの人々。

本人は、聞こえてないフリをしている。


「そんなに、自分が嫌いか」


龍牙はため息をつくと、携帯を開く。


「卓也...」


卓也が運ばれてきて3日目。

涼介も咲子も、これ以上の延命は無理だと言っている。

今の状況が限界。

もしかしたら、瞬きした瞬間、卓也が死ぬかもしれなかった。


「白野...百合亜、オマエはそれでいいのか?」


ボロくなった白いワンピースに、カーディガンを羽織っている。

左手には、携帯電話。

しかし、龍牙がかけても繋がらない。


「百合亜」


龍牙は意を決して、百合亜を捕まえようとするが、百合亜は抵抗して、暴れまくる。


「百合亜、このままじゃ、卓也が死ぬぞ!!」

「...見届けろと言うの?私にまた、失えって言うの?」

「百合亜....」

「もう、目の前で何かを失うのは、散々なのよッ!!」


龍牙は目を見開いて百合亜を見る。

どうしても“目の前”という言葉が気になった。


「目の前...?」


百合亜は顔を真っ青にして、首を振る。


「みんな、私の前で死んでいく...」

< 236 / 252 >

この作品をシェア

pagetop