誓~天才演技者達の恋~
このニュースは、百合亜自身も見ていた。
「なんで、こんなに悲しいんだろう...」
百合亜は細い路地裏にしゃがみ込んだ。
雨が降ってきていて、身体が冷え切っている。
こうなって、誰よりも納得するのは百合亜自身のハズだった。
なのにすぐに、百合亜の心には罪悪感でいっぱいになる。
「やっぱり、私にとって大切なのは、家族でも卓也でも無くて...演技なのかな?」
そう考えると悲しくて、でも...納得する。
自分が生き残った理由...。
「お、お姉ちゃん。Yuriaがいる」
その声に百合亜は顔を上げる。
すると目の前にはいなくて、右を見るといた。
路地裏に入る手前に、赤い傘を差した子と、黒と白の水玉の傘を持った子。
お姉ちゃんと呟いたのが、赤い傘の子だった。
「百合亜?」
水玉の傘の子は、傘を閉じると路地裏に入る。
「心配してたのよ?さっき空港でニュース見て」
「....杏莉(アンリ)?」
「そうよ。小阪杏莉。演戯祭の時、茉莉がお世話になったみたいね」
茉莉は赤の傘を杏莉と百合亜の上にやって、雨を遮る。
「茉莉、しばらく百合亜のこと黙ってなさい」
「えっ?お姉ちゃんまさか...」
「連れて帰るわ。バレるといろいろ面倒だから百合亜に、私のサングラスを貸してあげるわ」
すると茉莉は杏莉の手を止める。
「サングラスが無きゃ、お姉ちゃんバレちゃうよ?」
「茉莉、今日は雨降りよ。傘があるわ」
「でも...バレたら大変だよッ!だってお姉ちゃん、今回は極秘帰国でしょう?」
杏莉は傘を広げると、百合亜を立たせた。
「大丈夫よ。小阪姉妹と、Yuriaが一緒にいるなんて思わないし。
それに、こんな美女が3人もいたら、声かけたくても、かけられやしないわよ」