誓~天才演技者達の恋~
杏莉はウインクすると、百合亜に肩を貸す。
「杏莉...ありがとう」
「百合亜。とりあえずあんたを保護するけど、何があったかは話して貰うから」
「...うん」
百合亜は頷くと、茉莉を見つめた。
「あの?何か?」
「演戯祭の時、小阪茉莉って聞いて、杏莉の妹かな?って思ってたんだよね」
「あの時は、本当にありがとうございました」
「いいの、楽しかったから。本当に杏莉の妹とはね...」
杏莉は笑うと、茉莉を見ながら呟く。
「茉莉と全然似てないでしょう?茉莉も美人なんだけど、また私とはタイプが違うと思わない?」
「う...ん?そうなのかな?」
百合亜の返事に、杏莉は口を尖らせる。
小阪杏莉は、小さい時からの友達。
百合亜がデビューしたての頃、一番に声をかけて来た。
杏莉はモデルをメインとして活躍し、自分の世界を広めるために、海外へと旅立っていた。
それが、百合亜の飛行機事故の六ヶ月前。
杏莉は海外でも、パリコレモデルなどを務めていて、モデル業界ではトップ。
モデルの杏莉と知られれば、たちまち囲まれる事だろう。
「極秘帰国だっけ?」
「一年いるか、どうかなのよね...今回は」
杏莉は首を傾げながら言う。
何でも、呼び出されたらすぐに、戻らなきゃいけないらしい。
「ほら、もし大々的に帰ってきます。なんて言ったら、日本雑誌に載らなきゃいけないじゃない?」
「まぁ、杏莉ならね」
「でしょう?そうするとね、私の休みが無くなるのよ、休みが!」
茉莉は家の鍵を開けると、杏莉と百合亜を入れた。
「すみません、最近仕事が多くて、実家のほうは片付けてなくて」
「実家だなんて、いっちょまえに」
「だって、お姉ちゃんが帰ってくるって言ってた時に掃除して、それ以来やってないもん」