誓~天才演技者達の恋~

杏莉はウインクすると、百合亜に肩を貸す。


「杏莉...ありがとう」

「百合亜。とりあえずあんたを保護するけど、何があったかは話して貰うから」

「...うん」


百合亜は頷くと、茉莉を見つめた。


「あの?何か?」

「演戯祭の時、小阪茉莉って聞いて、杏莉の妹かな?って思ってたんだよね」

「あの時は、本当にありがとうございました」

「いいの、楽しかったから。本当に杏莉の妹とはね...」


杏莉は笑うと、茉莉を見ながら呟く。


「茉莉と全然似てないでしょう?茉莉も美人なんだけど、また私とはタイプが違うと思わない?」

「う...ん?そうなのかな?」


百合亜の返事に、杏莉は口を尖らせる。

小阪杏莉は、小さい時からの友達。

百合亜がデビューしたての頃、一番に声をかけて来た。

杏莉はモデルをメインとして活躍し、自分の世界を広めるために、海外へと旅立っていた。

それが、百合亜の飛行機事故の六ヶ月前。

杏莉は海外でも、パリコレモデルなどを務めていて、モデル業界ではトップ。

モデルの杏莉と知られれば、たちまち囲まれる事だろう。


「極秘帰国だっけ?」

「一年いるか、どうかなのよね...今回は」


杏莉は首を傾げながら言う。

何でも、呼び出されたらすぐに、戻らなきゃいけないらしい。


「ほら、もし大々的に帰ってきます。なんて言ったら、日本雑誌に載らなきゃいけないじゃない?」

「まぁ、杏莉ならね」

「でしょう?そうするとね、私の休みが無くなるのよ、休みが!」


茉莉は家の鍵を開けると、杏莉と百合亜を入れた。


「すみません、最近仕事が多くて、実家のほうは片付けてなくて」

「実家だなんて、いっちょまえに」

「だって、お姉ちゃんが帰ってくるって言ってた時に掃除して、それ以来やってないもん」


< 239 / 252 >

この作品をシェア

pagetop