誓~天才演技者達の恋~
明日香はエスカレーターで降りながら、父親を呼び止めた。
「あッ明日香……」
「実の娘を見て、そんな怯える事、無いでしょう?」
明日香は苦笑いをすると、父親のそばに駆け寄った。
父親は少し後退りしながらも、明日香のほうに向く。
「行くの?ニューヨーク」
「あぁ」
父親は一言返事をすると明日香から視線を外す。
「今日、あなたと同じ飛行機に友達……………
白野百合亜が乗るわ。」
「そう言えば、ニュースで言っていたな」
「あなたとは違って、百合亜は夢を追いかけに行くの。
母様と離婚したく無くて先延ばし手段として、アメリカに行くあなたとは違う」
父親は笑いながら、遠くを見つめた。
飛行機が飛び立つ姿は、とてもカッコ良く、明日香は笑う。
「あなたは…ううん。
お父さんは、私にとって物知り王では無かった。
飛行機だって、どうして鉄の塊が飛ぶんだ?って
お父さんは、子供の私に…子供のような質問をしてきた」
「明日香は
朝香(Asaka)のように物知りだったからな」
朝香は、明日香が一番尊敬する、自分の母親。
「明日香……帰って来てからでいいか?」
「何が?」
「きちんと伝えるから。明日香と朝香が欲しがっている言葉」
明日香は目を見開いて、父親を見ると、クスリと笑って一言。
「そう。期待しとくわ」
明日香は久々に、父親と笑った気がした。
『もっとけなしてやる』そのつもりだったのに。