誓~天才演技者達の恋~

百合亜は頷くと、一つ一つ話し始めた。

杏莉は頷くことも、声を出す事も無く、ただ聞いていた。


「私は、選べないの」

「.......」

「賢斗は菊花ユリアにとって大切な人。
卓也は白野百合亜にとって大切な人」


杏莉は百合亜の顔を覗きこむ。

百合亜は顔を隠して、泣いていた。


「菊花ユリアでも、百合亜は卓也くんを好きになったんでしょう?」

「うん...そうだと思う」

「じゃあ、素直に卓也くんの胸に帰ればいいじゃない」


杏莉は茉莉を呼んで、飲み物を持ってこさせる。


「ありがとう、茉莉」

「いいえ。
そういえば、Yuria..さん」

「百合亜でいいよ。私は引退..したから」


杏莉はボソリと「後悔してるクセに」と言う。

百合亜は引きつる顔で笑うと、茉莉の言葉を待った。


「日比野卓也さん、今すぐドナーが無いと、死んでしまうみたいです」

「........」

「茉莉、今の私達の会話聞いてたら分かるでしょう?百合亜は...」


杏莉は百合亜の表情を見て、言葉を失う。


「ちょっ、百合亜?」

「.......」


肩をブルブルと震わせ、顔は真っ青。

何故かずっと首を横に振っている。


「百合亜さん!?」

「茉莉、今すぐに電話をしなさい。119番よ」


百合亜はさらに首を振ると、椅子から落ちた。


「いなくなっちゃう...
冷たくなっていく....」

「百合、百合亜!!」

「叫んでも、叫んでも、誰も来ない..」
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