誓~天才演技者達の恋~

杏莉はすぐに悟った。

『飛行機事故が蘇っている』と。


「茉莉、電話はいい」

「えっ?お姉ちゃん?」


茉莉はとりあえず姉の命令で、受話器を置くが納得していない様子。

杏莉はポケットから携帯を取り出すと、ある人に電話をかけた。


「今すぐに来て頂けませんか?」


茉莉は心配そうに、百合亜を見る。

杏莉が背中をさすっているが、今だにブツブツ言っていて、顔は真っ青だ。

それに杏莉は誰に、電話をしているのだろう?

それが茉莉の心の中だった。


「茉莉、今すぐにお客さんが来るわ」

「えっ?お客さん?誰」


すると30分後くらいに、チャイムが鳴った。

茉莉は首を傾げながら、家のドアを開ける。


「あっ、あなたは...」

「あら、小阪茉莉ちゃんね。はじめまして」


茉莉は口をパクパクさせて、彼女を見る。

すると杏莉が玄関に顔を出した。


「久しぶりね。杏莉ちゃん。」

「えぇ、ほんと。百合亜はさっき寝ちゃいました。でも唸ってるんです」

「...そう....」

「はい。でも花坂社長と話したら、昔の百合亜みたいに無邪気に笑ってくれると思うんです」


果歩は考える表情をすると、小阪家に入る。


「もう、社長じゃなくてよ」

「そうなんですケド...やっぱり昔から呼んでると..」


果歩は杏莉の後ろについてきながら、気持ちを落ち着かせる。

ずっと、菊花ユリアを避けて来た。

白野百合亜にずっと会いたかった果歩。


「再会は少し、残酷ね」


果歩はポツリとつぶやくと、眠っている百合亜の傍に立った。
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