誓~天才演技者達の恋~

百合亜は車道側のほうを見た。


「!!!!!!!」


声にならない悲鳴を静かにあげる。

車の向こう側に彼はいた。

貴島龍牙は立っていた。


「な、んで...」

「帰るぞ、白野百合亜」


その大きな声に、百合亜にたくさんの視線がくる。

百合亜は首を振ると、駅の地下に向って走り出した。

龍牙は信号を使って渡ろうとするが、百合亜が走り出した瞬間点滅する。


「待てッ!!」


龍牙はガードレールを超えて、点滅中の車道に足を入れた。

すぐ近くに、黒いワゴン車とパトカーが追いかけっこをしているとは知らずに...。

その大きな衝突音を、百合亜は地下で聞く。

しかし、気にも止めずに百合亜は走る。


「百合亜、もうどこにいたのよ。携帯に電話しても繋がらない」


杏莉は百合亜の右腕を掴むと、百合亜の顔を覗きこむ。


「百合亜?どうしたの?」

「....。」

「まぁ、どうでもいいケド。果歩さんがチケットを用意してくれたのよ」


百合亜は黙ってチケットを受け取ると、杏莉に腕を引っ張られる。


「服を買うわよ、私の知り合いの家に、行ってもらわなきゃいけないんだから」

「....うん....」


百合亜は力なく頷くと、店に入る。


「はい、これ着てきて」


杏莉は百合亜に服を渡すと、試着室に入っていく百合亜を横目に、人々の騒がしさを気にする。


「上で事故遭ったんだって」

「うそー。」

「ほんと、ほんと。何でも、無免許の少年が警察に追われてて、信号無視して、男の人を轢いちゃったんだって」

「うわーグロいね...」
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