誓~天才演技者達の恋~

杏莉は百合亜の背中を見ると、悲しくなってきた自分がいることに気づいた。


「どうして...」

「杏莉?どうしたの?」


百合亜は杏莉の顔を覗き込む。

杏莉は涙を堪えると、首を振る。


「なんでも無い。」

「そう?」

「ここ、知り合いの住所。絶対ここに行くのよ」


杏莉は百合亜に住所が書かれた紙を手渡す。


「落ち着いたら帰ってきなさい。
もし、ここじゃないとこに行くなら、電話して」


果歩の言葉に百合亜は頷く。


「ごめんね。百合亜。
でもここにいても、あなたは卓也くんが死ぬのを待つだけ」

「.....」

「いてもいいのよ?香織には電話するし」


百合亜は首を振る。

果歩は百合亜を見ると、複雑な表情を浮かべた。


「本当に、いいの?見届け無くて」

「...いいんです。」

「本当に?」

「もう、小さい頃から覚悟はしてたんで。卓也が死ぬ事」


百合亜は小さくそう言うと、チケットを小さな鞄から取り出す。


「その家は、ちょっと都会に近いけど、百合亜を騒ぐマスコミはノーマークよ。灯台下暗しね」

「杏莉、茉莉ちゃんも、ありがとう」

「あの...私...」


茉莉は戸惑いながら、百合亜の前に立つ。


「茉莉?何を言うの?」

「私、Yuriaさんの演技..大好きです」

「!!!!!!!!?」

「私は何にも権力とか無いけど、待ってる人がいることは、覚えといてください。
こんなの、百合亜さんを困らせるかもしれないケド...

私、見たかったです。
卓也さんとYuriaさんが一緒にドラマや映画をやっているところ」
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