誓~天才演技者達の恋~
台本上にあるセリフ。
ただヒロインの名前が百合亜になっただけ。
それでも明日香はすべてを理解した。
あぁー二人は両想いなんだ...。
その日から卓也をちゃんと見ると、百合亜への視線は明日香や、他のクラスメイトとは違った。
今まではそれは、幼馴染で家が隣同士だからとばかり思っていた。
でも気づけば、分かれば良く分かってしまう。
明日香は泣くに泣けなかった。
卓也が演技をしている時点で分かっていたハズなのに。
明日香は気づいていないフリをした。
百合亜が学校に来ていない事でさえ、ラッキーだと思ったときもあった。
「ごめんね。
百合亜...
本当にごめんなさい...」
明日香は涙を零しながら、百合亜にひたすら謝った。
百合亜は一度、自分のほっぺたを抓ると明日香に抱きついた。
「何で、明日香が謝るの??
全然明日香は悪くない。
私だって気づいていたの。
明日香が卓也の事好きだって!!」
「えっ...?」
「でも、壊したく無かったから...こんなに明日香が苦しむなら、諦めとけば良かった?思いを伝えていれば良かったの...??」
記者達は首を傾げていた。
二人の会話は届いていない。
記者達は熱い友情だな...と感じながら写真を撮っていた。
「百合亜。伝えたんだよね??
きちんと卓也に届いてるよ。
だから百合亜はそのまんまでいい。
私の思いはもう過去形だから」
明日香はそう言うと、一つの方向を指差した。
百合亜はゆっくりと振り返る。
「私は、父のお見送りをしなきゃね。
....百合亜。じゃあね」
明日香は百合亜の向いているのとは反対に歩き始める。
「初恋は叶わない。か...
世の中には叶う奴、たくさんいるのにな...」