誓~天才演技者達の恋~
百合亜はまっすぐに卓也を見ていた。
振り払ってしまった...あの日の夜を思い出す。
そして、明日香の告白を思い出す。
「た...くや」
言葉にならない百合亜。
卓也はニコリと笑うと、ゆっくりと百合亜に近づいていく。
記者達は目を開けて、その状況を読み込む。
『演技か??』
『それともスクープか??』
記者達はライバル社関係ナシに、周りに聞きまくる。
そして、その呟きは果歩に聞かれた。
果歩は妖しく笑うと、何も言わずに立ち去る。
「いいの??事務所としてはマズイんじゃない??」
香織は果歩の傍で呟く。
果歩は何も言わずに二人を見ていた。
「いいのよ。
しばらくは百合亜...
ここにいないもの」
果歩の顔はどこか寂しげだったが、香織は何も言わずに頷く。
香織は遠くで賢斗が見ている事に気がついた。
「一人の少年の恋は終わったわね」
香織の言葉に果歩は
「一人で済むといいんだけど」と返した。
正体不明とされている菊花香織は、これ以上はマズイので立ち去ることにした。
「いつになったら正体明かすわけ??」
「そうね...我が社にプラスになる!と考えた時かしら」
香織は得意のウインクをして、報道陣をかき分けて歩きはじめる。
鎌足の横を笑みで通り過ぎ、まっすぐに歩く。
鎌足も何も気づかないようで、辺りを見回していた。
「明華の初代トップ生徒の実力...
今に知ったかしら??鎌足剛史さん」
香織はそう呟きながら車に乗り込んだ。
「さて、百合亜と日比野卓也という一般人は...どうなるのかしらね」
香織は高級ブランドのサングラスをかけると、高級車を急発進させた。
その車を睨むように、由梨は立っていた。
「あれって...菊花香織??...まさかッ。
シークレット社長なワケ無いわよね」