誓~天才演技者達の恋~
記者達は、息を呑んだ。
まるで映画のワンシーンのようで...。
記者達には何も出来なかった。
カメラに撮る事も、何も...出来なかった。
目の前で起こっていることが、綺麗過ぎる。
それが記者達の感想だった。
百合亜はポカーンとしている記者達を見て、真っ赤に赤面。
卓也も頭を抱えて、笑ってしまっていた。
「百合亜ちゃん...時間」
「うん...行く。」
卓也は百合亜の手を掴んで、すぐに離した。
百合亜は残念そうに、右手を握り締める。
何故、私たちは子供なんだろう??
百合亜と卓也は同じ事を思っていた。
でもその考えを振り払う。
今は子供だからしょうがない。
そう考えて、自分の気持ちを押し殺した。
行きたくない。
行って欲しくない。
そんな思いが交差する中、とうとう時間が来てしまった。
一般の方も乗っているので、これ以上は迷惑を掛けられない。
百合亜はネックレスのチャームを握り締めると、最後に口付けを。
「卓也、待ってるから。
帰って来たとき...楽しみにしてるからね」
「おう。期待しとけ」
百合亜はそう言うと、傍まで来ていた果歩に握手を求める。
果歩は笑うと、握手では無く抱きついた。
「頑張ってね。百合亜」
「はい...。」
「必ず、世界を圧倒させる女優になって、帰ってきます」
百合亜はそう記者達に言うと、手を振りながら飛行機の中へと消えていく。
世間が白野百合亜を見たのは、これが最後だった。