誓~天才演技者達の恋~

咲子の言葉に力なく笑うユリア。


ユリアは今まで眠っていたため、とてもガリガリだった。

なので一人では立っていられない。


咲子に体重を預けながらベットに戻る。



「もうすぐ、アナタの母親が来るわ。」


「....はい、分かりました。」



分からないけれど、会わないワケには行かなかった。


ユリアはユリアなりに、自分のことを知りたかった。



でも知れるのだろうか?

それがユリアの今の気持ちだった。


名前でさえ覚えてない自分が、過去を教えられたとして理解できるのか...そればかりが不安だった。


病室の窓に桜の花びらがくっつく。



「会いたい.......」



ボソリと呟いた声が部屋に響く。

ユリアは口を塞いだ。


誰も覚えていないのに、誰に会いたいのだろう?


ユリアはただ、出てしまった言葉に動揺してしまった。


でもユリアには一つだけ分かることがあった。

首辺りに...何かが足りない。


それだけでもユリアを不安にさせていた。



「どうして...何かがナイ」



アメリカで玉突き事故に遭ったという彼女の名は、菊花ユリア。


どうしてアメリカで事故に遭った彼女が、日本で目を覚ましたのか、本人はその疑問でさえ抱くことが出来なかった。


自分が“記憶喪失”ということに、彼女はきちんと気づいていない。



『君は生きてくれ...

.......そして伝えてくれ』



彼女はベットの上で、昨日よりも前を思い出そうとしていた。

しかし、ズキズキと頭痛がするだけだった。



「私は...菊花ユリア...」



白野百合亜と同じ名を持つユリア。

彼女はまだ
白野百合亜を知らない...。

< 40 / 252 >

この作品をシェア

pagetop