誓~天才演技者達の恋~
咲子の言葉に力なく笑うユリア。
ユリアは今まで眠っていたため、とてもガリガリだった。
なので一人では立っていられない。
咲子に体重を預けながらベットに戻る。
「もうすぐ、アナタの母親が来るわ。」
「....はい、分かりました。」
分からないけれど、会わないワケには行かなかった。
ユリアはユリアなりに、自分のことを知りたかった。
でも知れるのだろうか?
それがユリアの今の気持ちだった。
名前でさえ覚えてない自分が、過去を教えられたとして理解できるのか...そればかりが不安だった。
病室の窓に桜の花びらがくっつく。
「会いたい.......」
ボソリと呟いた声が部屋に響く。
ユリアは口を塞いだ。
誰も覚えていないのに、誰に会いたいのだろう?
ユリアはただ、出てしまった言葉に動揺してしまった。
でもユリアには一つだけ分かることがあった。
首辺りに...何かが足りない。
それだけでもユリアを不安にさせていた。
「どうして...何かがナイ」
アメリカで玉突き事故に遭ったという彼女の名は、菊花ユリア。
どうしてアメリカで事故に遭った彼女が、日本で目を覚ましたのか、本人はその疑問でさえ抱くことが出来なかった。
自分が“記憶喪失”ということに、彼女はきちんと気づいていない。
『君は生きてくれ...
.......そして伝えてくれ』
彼女はベットの上で、昨日よりも前を思い出そうとしていた。
しかし、ズキズキと頭痛がするだけだった。
「私は...菊花ユリア...」
白野百合亜と同じ名を持つユリア。
彼女はまだ
白野百合亜を知らない...。