誓~天才演技者達の恋~
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「トップ生徒の日比野卓也くん
城崎賢斗くん、歌原由梨さんだね。
朝早くから悪いね」
明華学園芸能科の教員トップは、三人の顔を見ながらそう言った。
そして、卓也の前に立つと鼻で笑った。
「日比野君。私はキミに期待しているよ。
学力も運動も演技も完璧なキミにね」
「はい。
ご期待に沿えるよう頑張ります」
その横で、賢斗はあくびを押し殺していた。
そして携帯がポケットの中で動く。
「ちょっと、失礼いたしますね。」
賢斗は特別室から出ると、携帯のメールを確認した。
それは香織からで“目を覚ました”という一言だった。
賢斗は静かにガッツポーズをして卓也を見る。
教員と話している卓也は気づかず、賢斗だけが視線を送っている形となった。
由梨が視線に気がつき、振り向く。
賢斗は急いで逸らし、由梨は首をかしげた。
「日比野君。キミの傷はもう癒えたのかね?」
「....癒えているも何も
前に進まなくてはイケナイので」
由梨は卓也を見つめていた。
その間に賢斗が入ると、由梨は賢斗を睨んだ。
「もちろん城崎君、歌原さんにも期待しているよ。
大物演技者になってくれるとね」
卓也は、部屋の中にある写真を見つけた。
それはここの学園長と百合亜が映っている写真だった。
「しかし白野百合亜という天才が死んで、今のテレビ業界は衰退の道を歩んでいる。
キミ達が必ずや、テレビ業界に新たな光を注ぐと信じている」
「中一の俺らには、重すぎる話ですね。」
賢斗の言葉に由梨は笑う。
「重いなんて事無いわ。
いいプレッシャーよ。
ただ私たちが超えればいいのよ。
あの亡き、天才白野百合亜をね。
ねぇ、卓也」
「超えられれば、苦労しない」
卓也は静かに、部屋から出て行った。