誓~天才演技者達の恋~
明日香は体育館に入ると、卓也を探す。
見つけ出すと、明日香はニコリと笑って掟破りを始める。
一般人の集まり普通科の人間が、芸能科に近づくのはマズイ。
それを教師は分かっているのだが、明日香には何も言えない。
そう霧島ジュエリーの会長の孫には、何も言えないのだった。
「おいッ!あの美人って芸能科じゃねぇー!」
「はぁ?マジかよッ!」
「でも何で教師は止めないんだ??」
周りにコソコソ騒がれながら明日香は、卓也のもとに向う。
由梨は不思議そうに明日香を見つめる。
「日比野卓也。
.....卓也。
久しぶりね」
卓也はゆっくりと振り返ると、静かに笑う。
それを見ていた由梨は、明日香を睨み始めた。
明日香はそれを知ってか、空いている隣の席に腰を落とす。
「いいのかよ。普通科の人間が」
「科は普通でも、人間の質は上の上よ。霧島ジュエリーの会長の孫なんだから」
嫌味らしく由梨に視線を向けながら言う明日香。
由梨は悔しそうに唇を噛んだ。
「あなたも大変ね。
変なのに好かれて。
天国で百合亜が泣いてるわよ」
「でも歌原由梨には感謝しているから....」
明日香はため息をつくと、席を立ち上がった。
その姿でさえ美しい明日香。
「芸能科のトップがあなた
...普通科のトップは私。
これからいろいろとお世話になるわよ」
卓也に明日香はハグをした。
そして歩きながら由梨に会釈。
その悔しそうな顔を見て、明日香は笑っていた。
「私に似てるな...彼女は」
明日香はそう呟くと、席に座る。
周りの男子は明日香に釘付けだった。
「あの女...腹がたつー!!」
由梨は得たいの知れない美女に、心の底から腹をたてていた。