誓~天才演技者達の恋~
由梨は口を開けて、師道の背中を見つめていた。
この機会に師羅監督の本名を知りたかったのだが、なんとなく止めておいた。
「師道。主役はトップ生徒を中心に作ってくれ。一年生の時はそれが中心で...っていう決まりだから」
「はい、分かりました」
師道は今日を使って、明日までにおおまかな設定を決めてこなくてはいけなかった。
由梨は師羅監督の息子...ということで期待はしていなかった。
由梨の中では、親の才能は子に継がれない...という考えでいた。
「期待はしないケド、頑張ってね」
「期待に沿えないように頑張ります」
由梨は首をかしげて、目の前の男の首を掴む。
「どういう意味?」
「だって、期待をしていない...が由梨さんの期待なんでしょう?」
由梨は「そうね」と呟くと、プリントにどんな作品にしたいかを書き始めた。
師道はこれを元に、話を作るのだという。
「ねぇ、あんたはどんな作品なら書きやすいの?」
「期待してない割には、変なこと聞くんですね。」
「フンッ!私は、演戯祭にかけてるの!」
師道は笑いを堪えると、真剣な顔つきになった。
由梨は一瞬ドキッとしたが、すぐさま元に戻る。
師道は何冊かノートを出すと、自信気に笑う。
「これを見ていただければ分かりますよ。」
「そんな暇ないわよッ!何よ、私の期待していない発言がそんなに気に食わなかったわけ?
なんなら謝りましょうか!?
なによ、才能はありますけど?って言う見せつけ!!」
由梨の言葉に、師道は大爆笑していた。
注意されても師道は笑い続けていた。
由梨はそんな師道を見て、卓也もこんなに笑ってくれればいいのに...と思っていた。
賢斗はシャーペンを置いて、アンケートを前に出した。
そして帰る支度をして、賢斗は教室から出て行った。
「賢斗くん、クールすぎっ!!」
女子が騒いでいるのを、由梨は横目に見ていた。
「あの男のドコがいいのよ」