誓~天才演技者達の恋~
ユリアは賢斗を見送った後、ネックレスを外して、マジマジと見た。
少しネックレスに傷があることに気がついたユリア。
首を傾げながらも、ユリアはチャームの後ろを見る。
「本当にYuriaって入ってる...。
賢斗...のためにも早く、早く記憶を取り戻さなきゃ」
ユリアはネックレスを付け直すと、ナースコールを押した。
押してすぐに咲子が現れる。
ユリアは枕の下からメモ帳を取り出すと、咲子に座るよう言った。
咲子は白衣を投げ捨て、ベットの端に足を組んで座る。
「香織さんから聞きました。事故前の菊花ユリアについて...。
4月12日が誕生日だとか、AB型だとか...。
でも足りないんです!恋人っていう賢斗が来ても...やっぱり足りない。
私って、欲張りなんでしょうか??
知りたいんです。事故前の私を。
変に変わってしまっているならば、大切な人をモノを失うかも知れない...もう失ってしまっているかも知れない。
怖いんです。」
咲子は頭を掻くと、いったん病室から出て行った。
数分後に戻ってきた咲子は、何か本を持っていた。
「あなたの母親、菊花香織さんに頼まれていたの。もし、ユリアに意思が見えれば渡して欲しいって。
これであなたが見つかるかも知れない。」
ユリアは黙って受け取った。
中を捲ると、セリフが書かれていた。
ユリアは台本と言われるモノを、強く握り締めた。
「あなたのお母さんは、菊花プロダクションの社長よ。だから、娘のあなた自身も芸能界に興味があったみたい。
その中でも女優業に.....」
ユリアは小さくお礼を言うと、すぐさま読み始めた。
咲子はクスリと笑って病室を出る。
「ねぇ、聞いてくれる?
わたしは...あなたを好きになってしまった。
それは、掟破りのことなのに...」
ユリアは一時間で読み終わると、台本を閉じた。
そして、ゆっくりと立ち上がる。
「出来る限り、やってみよう。
なんだかセリフは、頭に入ってきたわ...」