誓~天才演技者達の恋~
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教室に冷たい風が入る。
由梨は顔を歪め、セリフを続けた。
「私は、皇女なんていう称号はいらないのぉ!
あなたが欲しいの...」
由梨は台本を片手に卓也に抱きついた。
卓也はハニカムと、由梨をゆっくり離した。
「ルリ様、私は奴隷と言ってもいい存在です。
あなたさまのような方とは、とても釣り合いません」
「タイト...」
由梨と卓也は、師道が書き下ろしたばかりの台本を手にし、さっそく合わせていた。
周りのクラスメイト達は、息を呑んで二人を見つめる。
賢斗はドアに寄りかかり、卓也の表情を見ていた。
「笑うのは...演技だけか...“あいつ”と一緒だな」
あいつというのは、賢斗がつい先日会った女性のこと。
自分の彼女でもあるのだが、その本人は記憶喪失のため、賢斗は自分に彼女がいるという自覚が無かった。
「あいつだったら、もっと凄いんだろうか」
そして彼女の菊花ユリアは、賢斗も驚く才能を持っていた。
その才能こそが演技であり、ユリアが唯一楽しそうに笑う時だった。
もちろん演技をしていない時も笑うのだが、どこかぎこちなく、賢斗自身笑っているという思いがなかった。
『ねぇ、聞いてくれる?』
賢斗は、この前見たユリアの演技を思い出していた。
どこか寂しげで...でも凛々しくて...
なんとも言えない感情になる。
「賢斗!聞いてるの!?」
賢斗が目の前を見ると、腕を組んで仁王立ちしている由梨。
賢斗は一瞬、由梨が百合亜にかぶってしまった。
「あいつは...死んだんだよな....」
「はぁ!?自分の出場所まで分からないくせして、何つぶやいてんの?」