誓~天才演技者達の恋~
卓也は無表情に戻っており、ドアのところまで来ていた。
賢斗は卓也の無表情と、冷たい凍った瞳を見て鼻で笑った。
由梨はますます不機嫌になる一方だったのだが、周りのクラスメイト達は知らん振りをしていた。
「オマエ、これから一生...無表情の冷たい瞳で生きていく気か?」
卓也は意味が分からないというように口を開けていた。
由梨は腕を何回も組みなおしながら、賢斗の一言を聞いていた。
「あんたは、卓也に何がいいたいのよッ!クールさを売る...それが一緒だとでも言いたいの??」
賢斗は手を付けて「違う」と呟いた。
卓也は近くにあった椅子に座って、下から賢斗の目を見ていた。
「何...その下から目線...まぁいいけどさ」
「....なんなんだよ。オマエっていつも俺に喧嘩腰だよな。俺...なんかした?」
卓也の喋り声を、演技以外できちんと聞いたのは初めてだった賢斗。
目をパチクリさせながらも賢斗は笑う。
「あぁー分かったわよ、城崎賢斗!!卓也が明華学園の総合トップ...それが納得出来ないんでしょう??」
「馬鹿ッ、全然違うわッ!!」
由梨の言葉にすばやく反応する賢斗。
卓也は無表情でそれを見つめていた。
「そうじゃなくてさ....早いと思わないか?」
「だからなんなのよッ!!練習しないと...」
由梨は口を開くのを止めた。
何故なら、賢斗と卓也が物凄い瞳で睨み合っていたからだ。
教室の空気が凍りつく...。
「オマエが言いたいことは分かったよ...でも意味がわかんねぇー」
「...そうだな...白野百合亜が生きているって言ったら...どうする?」
――ガターンッ
「卓也ッ!やめッ!!」
椅子は床に転がり、教室に由梨の叫び声が響く。
卓也は相変わらずの無表情で、賢斗に殴りかかろうとしていた。