誓~天才演技者達の恋~


ユリアはそう呟きながら、すれ違う車を見た。


「イッ...!!」

「ユリアさん!?」


シートに倒れこんでいくユリアを横目で確認した和人は、すぐさま端に車を止めて、後部座席を開けた。

台本はシートの下に落ち、ユリアは苦しそうに頭を抱えていた。

和人はユリアに呼びかけるが、ユリアは「大丈夫です」と呟くばかり。

困り果て、何となく明華の門を見ていると、日比野卓也がジィーと和人を見ていた。


「まさか...ユリアさん...」

「イッ....ッ!!」


和人は運転席に戻り、ハンドルを握る。

そのまま急発進させると、ユリアの病院に戻っていった。


「卓也!!」


由梨の叫び声が遠くから聞える。

卓也は視線を由梨に送ると、由梨は校舎へと入っていった。


「あら...今到着?撒かれていたわけだ」

「!!!!」

「そんなに驚かなくても大丈夫よ。今の視線送りは一枚しか撮ってないから」


赤のフレームを持ち上げながら笑う朱美。

卓也は怒りを表したように朱美を睨むが、朱美には一切効いていないようで...。


「でも面白い写真は撮れたわよ。黒いバンを不思議そうに...でもどこか愛しそうに見つめるあなたの表情。
表情を演技以外で出さない...白野百合亜が生涯の中で愛した日比野卓也。

あの車には...誰が乗っていたのかしら??」


朱美は右手をグーにして、マイクのように見立てた。

卓也はその手を振り払うと、校舎へと入っていこうとしていた。


「本当に誰が乗っていたかは知りませんよ。ただ気になったダケです」

「本当に...?『everydayフラッシュ』の土居朱美にだけでも教えてくださいよ」


卓也は手を振ると、無表情で校舎へと入っていった。

朱美はさっき撮った写真を見る。


「黒いバン...そしてこれは調べてた...菊花の新人社員...室井和人。ってことはここにいるのはおそらく...。

白野百合亜にそっくりな、菊花香織の娘」





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