誓~天才演技者達の恋~


百合亜は、白野百合亜という役者じゃないと、素直に気持ちを表現出来なかった。


素直になることは、簡単じゃない。


特に、百合亜にとって大切な人ほど…



「果歩さん、ありがとうございました」



百合亜がドアを閉めると、果歩の高級車はエンジン全開で街に消えていく。


その音を聞いてか、百合亜の家の隣人が顔を出した。



「おぉ、帰って来たか」


毎日のように二階の自分の部屋から顔を出し、百合亜に話しかける少年。

それが幼馴染であり、百合亜の恋する相手...。


素直になりたくても、顔を見ると、強がりになってしまう人。


日比野卓也
(HibinoTakuya)であった。



「ただいま卓也」

「おかえり。ってどうしたんだよイキナリ」


「言いたかったの...今までちゃんと言った事無かったでしょう?」


卓也は鼻で笑うと、傍の大きい木を伝い、下に降りてきた。


そして百合亜の頭をポンッと優しく叩くとにっこり笑って「もうホームシックか?」と呟く。



「まだ行ってないのに、ホームシックになんかならないもん」


「ハハッだよな、それにお前の両親も行くんだろう?良かったな一人っきりじゃなくて」



百合亜はあふれ出そうになる涙を堪えながら、卓也に抱きつく。

卓也はいつも通りに抱き返す...。



「相変わらずだなお前」


< 6 / 252 >

この作品をシェア

pagetop