誓~天才演技者達の恋~
百合亜は、白野百合亜という役者じゃないと、素直に気持ちを表現出来なかった。
素直になることは、簡単じゃない。
特に、百合亜にとって大切な人ほど…
「果歩さん、ありがとうございました」
百合亜がドアを閉めると、果歩の高級車はエンジン全開で街に消えていく。
その音を聞いてか、百合亜の家の隣人が顔を出した。
「おぉ、帰って来たか」
毎日のように二階の自分の部屋から顔を出し、百合亜に話しかける少年。
それが幼馴染であり、百合亜の恋する相手...。
素直になりたくても、顔を見ると、強がりになってしまう人。
日比野卓也
(HibinoTakuya)であった。
「ただいま卓也」
「おかえり。ってどうしたんだよイキナリ」
「言いたかったの...今までちゃんと言った事無かったでしょう?」
卓也は鼻で笑うと、傍の大きい木を伝い、下に降りてきた。
そして百合亜の頭をポンッと優しく叩くとにっこり笑って「もうホームシックか?」と呟く。
「まだ行ってないのに、ホームシックになんかならないもん」
「ハハッだよな、それにお前の両親も行くんだろう?良かったな一人っきりじゃなくて」
百合亜はあふれ出そうになる涙を堪えながら、卓也に抱きつく。
卓也はいつも通りに抱き返す...。
「相変わらずだなお前」